第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「……テメェが何で、電話に、出んだよ」
「悪い。凪は、今、電話には出られない」
「ンでだよ。凪のスマホ持ってるってことは近くにいんだろがァ!」
隣の出久が怒りを抑えろと俺の腕を掴んで、強張った表情のまま首を振る。
少し沈黙の後、蝉の声にかき消されそうな声で轟は答える。嫌な汗がまたじわりと流れた。
「………凪は、病院だ」
「は……?……病院?」
「……俺が一緒にいたのに止められなかった」
「はぁぁぁ!!?てめ、凪に何した!?」
叫ぶ俺の声は、その場に響き渡った。手元のスマホが微かに震え、指先に力が入りすぎて汗で滑る。
「傷自体は大したことはない。ただ、錯乱状態で、凪は、……自分を傷つけた」
俺には轟の声が震えているようにも聞こえた。理解をしようにも思考が追いつかず、頭が真っ白になる。胸の奥のざわつきは消えないまま、蝉の声すら遠く感じた。
「落ち着かせるためにも凪には薬で眠ってもらっている」
「……嘘だろ。なぁ、凪はどこの病院にいんだ?教えろ」
「悪い、爆豪…。それは、教えることはできない」
「ンだそれ、ふざけんなよ…ッ」
「医者から止められている。今の凪が爆豪に会ったら、多分、自分をさらに責めるだけだ」
沈黙の後、轟は小さく息を吐いた。
「俺がこんなこと言えた立場じゃねぇけど…、今は凪が落ち着くまでの時間が必要だ」
「テメェが判断すんのかよ…」
「……俺が、ここに残ると決めただけだ」
「デカい口叩いてじゃねぇよ。テメェに、何ができんだよっ」
「何もできない。それでも、俺は凪のそばにいたい。守ってやりてぇだけだ」
「……なぁ、轟。それは、凪が選んだことなのか?」
「……悪い、爆豪。俺は凪のそばに戻る。また、追って連絡する」
一方的に切られた電話の終了音が、俺はもう取り返しがつかない場所に立っているという事実を突きつける。
スマホを持つ手が力無く震えていた。
「ねぇ、かっちゃん…。…何が、あったの…?」
なんでこんなことになった?
もっと早く、俺が凪の変化に気付いていれば
あん時にもっと、話を聞いてやってたら
なぁ、俺は、
ずっと何をしてたんだよ…。
next.