第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 轟side
凪に教えられた住所を辿り、明るくなり始めた街を走る。助手席の凪は何も言わず、目を閉じたまま。昨夜に比べて顔色は戻ったものの、覇気はなく、俺が思うよりも長い時間、一人で悩んでいたんだろう。
〝もう何も考えなくていい〟そう言ったのは、自分のためだったのかもしれない。
そうしているうちにナビが目的地を告げる。駐車場の隣の空いているスペースに車を停めて、助手席のドアを開ける。朝の光が凪を照らし、眠そうな目を開けて周りを見回すように視線を揺らした。
「ごめん。寝ちゃってた…。もしかして、もう着いた」
「ああ、起こして悪い…」
「ううん。送ってくれてありがとう。もうここでいいから、轟君は帰って。少しでも休んで?」
「凪が点滴を受けている間に、経口補水液とかそういうもん買っといたから、運ぶ」
「そんな、よかったのに」
「後で俺からも爆豪にも連絡しておく」
「本当に、ありがとう。迷惑かけちゃってごめんね」
「気にするな。俺は特別なことはしてねぇから…」
凪は一瞬だけ視線を伏せて、ゆっくりと口元を緩めた。目の奥まで届いていない小さな笑みに、うまく言葉にできない違和感が残る。
「降りれるか?」
「大丈夫。今は立ちくらみもないから」
「じゃ荷物を運ぶから。部屋を教えてくれ」
「うん。…こっち」
凪は建物の脇へと歩き出す。二階建てのアパートで外壁は少し色褪せているが、きちんと手入れはされている。一階の角部屋は朝日が差し込み、白いドアを照らしていた。
「……ここ」
そう言って足を止めた。ドアの前でしばらく黙った後、振り返って俺を見る。
「どうした?」
「…今思い出したんだけど、私、鍵を閉めないまま出てきちゃった」
凪の言う通り、ドアレバーを下げるとガチャリと静かな金属音が鳴り、ドアがゆっくりと開く。