第1章 出会い編
「お疲れ様でした」
「お疲れさま、名無しちゃん」
夜七時になり、あなたはブティックの店じまいを他のスタッフとした。
これから彼のホテルに向かい、会えることになるかもしれないと気持ちが浮き立つ。
一応メッセージアプリのIDを交換したが、ヴィクトルは多忙な人だし何も送っていない。
そもそも、彼は彼で心変わりしたかもしれない。
面倒だから帰れと追い返されても、何もおかしくなかった。
色々な覚悟をして、ひとまず部屋に行ってみようと考えていた。
でもその前に、自宅に服を取りに行かなければ。
帰宅するのは四日ぶりだけど、ブティック用の服は普段着よりも大人っぽく上質で、この店で仕入れたものである。
あなたは電車に乗り、二十分ほどの距離を揺られる。そうして駅から重い足取りでアパートに着いた。
石造りの古い建物だが大きく、立派な外観だ。
「出て行ってって言ったから、もういないよね――」
階段を上り、緊張しながら自宅の鍵を開ける。
すると目を疑うものを発見した。
玄関口にあったのは、知らない女物のパンプスだった。