第7章 デート
あなたは鞄の中を探り、少しドキドキする。
本当は今日、彼へのプレゼントを持ってきていた。渡すタイミングを見計らっていたが、レストランより外のほうがいいと思った。
その前に、ひとつ気になることがあった。まだ音楽を探してくれてる彼の首筋に、そっと鼻を近づける。
「ん⋯⋯っ? どうしたの名無しちゃん?」
不意打ちを食らったヴィクトルが、振り向きざまにさっと顔を赤らめた。
あなたは微笑みながらもこう告げる。
「やっぱり今日もいい匂いがするなぁ」
「⋯そう? シェイビングクリームじゃないかな?」
「そうなのっ? 香水じゃないのっ?」
「はは。香水も時々つけるよ。どういうのが好き? 君の好きなのにしようかな」
そう笑まれてドキッとする。
よし。ちょうど話題がそっちに移ったとあなたは内心喜んだ。
「それも嬉しいなぁ。あのね、ヴィクトル。実はちょっとしたプレゼントがあるんだ。もらってくれる?」
「⋯⋯えっ? なにっ?」
彼は突然のことに、素で驚いた様子だった。
あなたが持つ手のひらサイズの四角い箱をみて瞬きをする。
きちんとリボンもかけられ、明らかにヴィクトルのために包装したものだ。
「あ⋯⋯名無しちゃん」
「本当にちょっとしたものだよ? あんまり期待しないでね」
「いやいや、うれしすぎて⋯⋯ごめんすぐに言葉が出てこない」
彼は渡されたものを大事そうに両手で受け取った。
開けるように勧めると中から現れたガラス瓶に彼は感嘆の声を上げる。
「あっ! 香水だね、俺にくれるのかい?」
「そうだよ。好きな香りかな、分かんないんだけど。ヴィクトルに似合いそうだなぁと思ったんだ。いつもいい香りするし、色んな種類つけてる気がして」
説明すると彼の表情がみるみるうちに緩まり、照れたような笑みが広がる。
「ありがとう⋯⋯俺のために選んでくれたなんて。それに、⋯⋯あぁ、凄くいい香りだ。こういう香りは持ってないよ」
「本当っ? よかったぁ」
確かに彼にしては珍しい、すっきりライトなアンバーの香りだ。いつもの男性的なくらっとくる香りもとても好きだけど、こういうのも風呂上がりにでもいいんじゃないかと考えた。
「いいねえ。俺はいつでもつけたいけどな。ありがとね、名無しちゃん」
「えっ――んんっ」