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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第1章 出会い編


あなたは駅の改札口近くに立っていた。
ここから見える外は雨で、曇り空だ。
ロングニットから生足が出ていて、ブーツを履いた脚は肌寒い。

小さい荷物とポシェット、傘しかもっておらずあなたは少し震えていた。


夜の7時頃。向かいのタクシー乗り場に、人目を引く男が車を待っていた。
彼は背が高く、身なりのいいスーツを着ている。
黒髪はやや長くウェーブががっていて、すらっとした体型はモデルのようだった。

中年だが、堀の深い顔立ちであなたは見惚れる。
彼をじっと観察していると、頭の中で非現実的な想像がふくらんでいった。

そうして引き寄せられるように、彼に近づいていった。

「あの⋯⋯すみません」
「ん?」

彼はあなたの声がしたほうを探す。
あなたは女性ながら背は高いほうだが、彼はそれより頭一つ分も大きかった。

「なに? どうしたのお嬢さん」

彼は不審がることもなく、にこりと目元に細かい皺を刻んで尋ねる。
一見冷たそうな美しい顔立ちに、自然に乗った笑みにあなたはぽうっとした。

「今日行くところなくて。おじさんのお家に行ってもいい?」

普段は目上の人にタメ口など使わないが、思いきって馴れ馴れしく聞いた。
彼は一瞬、切れ長の黒い瞳を丸くする。

きっと危ない子だとあしらわれて終わりだろう。
そう落ち込んだあなたの不安げな眼差しを、彼は無視できないようだった。

「お家って⋯⋯俺の? 俺はホテル泊まりなんだけど」

周りに人はいないけれど、彼は背を曲げてこっそりと耳打ちしてきた。
あなたは内心どきりとするが、自分は軽薄な女なのだとなりきって頷く。

「それでもいいよ」
「そうか。⋯⋯君いくつなんだい?」
「21」
「若いねえ」

彼は参ったように眉を下げて笑う。
目の前で腕を組まれるが、あなたはまだ答えをもらうのを諦めない。

するとその瞬間は遠からず訪れた。
タクシーがちょうど光を点滅させてやって来たのだ。

黒い車の扉が開くと、彼はあなたに振り返ってこう言った。

「君。名前なんて言うの?」
「名無しだよ」
「そうか。わかった」

彼は続けてこう告げる。

「俺はヴィクトルというんだ。よろしくね。――じゃあ行こうか。名無しちゃん」

扉に手をかけて妖艶にウインクしてくる。
キザな振る舞いだと思ったが、このスマートな中年男性にはやけに似合っていた。
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