【HUNTER×HUNTER】水面に映る雷光【キルア】
第4章 道化師の介入
朝靄が、谷間に溜まっている。
キルアとテティスは並んで歩いていた。
距離は近いが、触れない。
それが、もう自然になっている。
『今日の道、回り道になる』
テティスが地図を見ながら言う。
「問題ないぜ」
キルアは即答する。
「人通り、多い方が嫌だな」
『……同感』
二人は視線を合わせ、
小さく頷き合う。
――その瞬間。
ぞわりと、
背筋をなぞるような感覚。
キルアが足を止める。
「……気づいたか」
テティスも、わずかに身構える。
『見られてる』
だが、敵意はない。
殺気もない。
ただ――
視線だけ。
キルアは、木々の奥を睨む。
「出てこい」
返事はない。
(……というか…この念の気配…)
間違えようがない。
「……クソ」
低く吐き捨てる。
テティスが振り向く。
『どうしたの?』
キルアは答えない。
代わりに、テティスを背中側へ押しやる。
「下がれ。俺の後ろ」
声が、いつもより硬い。
(この嫌な感じ……遊び半分で覗く感じ)
頭の中に、最悪の名前が浮かぶ。
――ヒソカ。
キルアは木々の奥を睨む。
「……見てるだろ」
返事はない。
だが、
念が、わずかに“弾む”。
確信。
(間違いねぇ……あいつだ)
テティスが、キルアの異変に気づく。
『知ってる人?』
「……知ってるなんてもんじゃない」
歯を食いしばる。
「絶対に、関わるな」
『え?』
「何があっても、
俺から離れるな」
命令口調。
それは恐怖じゃない。
経験に裏打ちされた判断。
キルアは、あえて相手にしない。
(……今は、無視が正解だ)
念を最小限に抑え、歩き出す。