第20章 【九十九】八百比丘尼と呪胎九相図
「八重ちゃんと同化しようとは思わなかったのか?」
脹相が席を外したタイミングで、そう天元に尋ねた。
八重ちゃんに星漿体としての素質があるかどうかはわからないが、彼女と同化できたとしたら〝不死〟しかない天元は〝不老〟も手にできるのではないか?
その可能性の示唆。
「…あぁ、八重と出会って、彼女の境遇を聞いた時に真っ先にその可能性を考えたさ。しかし、いくら検証しても海の寵児という存在の危険性を排除するまでには至らなかった」
「…つまり?」
「八重と同化して私が海に取り込まれる可能性も捨てきれなかった、ということだ」
八重ちゃんのバックについているものはそれ程ということか。
「これを言うとお前はまた噛み付くだろうが、八重について検証していく過程で星漿体との同化によって肉体の老化をリセットするという方法に行き着いた」
「……私たちはあの娘のプロトタイプという訳か…。お前は神にでもなるつもりだったのか?」
「違う。あくまで八重を人に戻す為の一つの検証。100年という時間を共にしてもそれは叶わなかった。出来るだけ永い時を生き、結界を維持するという目的ももちろんあるが、彼女の願いを果たしてやりたい、そう思ってはいた」
「何故そこまで八重ちゃんに肩入れする?」
「…俗に言えば『情が湧いた』というやつかな。お前も100年あの子といればわかるだろうよ」
その感覚は彼女と数時間過ごしただけでも何となくわかる。
実際、私自身も彼女をどうにかしてやりたいという気持ちが芽生えている。
しかし、それが彼女自身の持っている質なのか、与えられたギフトなのかはわからない。
「その情を星漿体に少しでも向けてやればいいものを…」
「九十九由基、君は八重をどのように見る?あの子の特殊性はなくせると思うか?」
「おいおい、お前が100年かかってもわからなかったものが高々数時間一緒にいただけの私に何がわかるっていうんだ」
「印象だけでもいい。君は長年、魂の研究をしてきたのだろう?何か思うところはないか?」
「まぁ、彼女はギフトの贈り主がわかっていること。与えられた能力が複雑であること。そこを読み解くことができれば可能性はあるんじゃないかって印象だな」
「そうか。君がそういうのなら安心だ」