白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第25章 ○ 誕生日のサプライズ ●
緒方が22時近くに帰宅すると、エントランスに星歌がいた。
「どうした?こんな時間に」
「精次さん、お誕生日おめでとう」
慌てて駆け寄る緒方に星歌は笑顔で言い、プレゼントが入った紙袋を差しだした。
「…誕生日か、そっか…」
すっかり忘れていた。自分の誕生日なんてどうでもいい。だが、星歌が祝ってくれることは嬉しかった。こんな寒い夜に、いつ帰るか分からないオレを待っていてくれたのか。もう遅い時間だが少しなら構わないだろうと、星歌を部屋に招き入れることにした。
「何かあたたかいもの飲んでいけ」
星歌の肩を抱くと、すっかりと冷え切っているようだった。
「連絡くれれば、もっと急いで帰ったのに」
「だって、サプライズで渡したかったから…」
「遅くなったらどうするつもりだったんだ?」
「22時まで待とうと思ってたから…帰ってきてくれて、よかった」
星歌の嬉しそうな声に、緒方も思わず笑みをこぼす。
部屋に入ってプレゼントを開けてみると、シンプルだが上質だとひと目で分かる黒のタートルニット。
「精次さんに似合うと思った」
星歌が笑顔で言う。
緒方が寝室で着替えてから戻ると、星歌は頬を赤らめる。
「やっぱり、すごくカッコいい」
「ありがとう」
緒方はそう言って星歌の隣に座り、肩をそっと引き寄せた。
「…誕生日、忘れてた」
「え?」
「誕生日はどうでもいいが、星歌がこうして来てくれたことが、1番嬉しい」
「どうでもよくないよ。大事な日」
緒方に身を委ねつつも、軽く抗議するような星歌の声。
「去年も忘れていた」
「え?」
「去年は、星歌がお祝いのメッセージをくれたから思いだしたんだ」
「来年はちゃんと計画してお祝いしよう?大事な日なんだから」
「そうか、じゃあ、そうするか」
「うん!」
星歌との未来の約束。緒方にとっては何よりも嬉しいプレゼントであったかもしれない。