白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第25章 ○ 誕生日のサプライズ ●
1月17日、緒方の誕生日。昨年の星歌は緒方にお祝いのメッセージを送るだけだったが、もう2人は恋人同士だ。年が明けてから緒方が対局や研究会で忙しく、2人で会う時間がとれずにいるが、誕生日プレゼントを当日に渡したいと、ひそかにサプライズを計画していた。
棋院に行けば会えるだろうと、バイトは休みなのに学校帰りに寄ってみる。棋院に着いたはいいが、さて、どこに行けば…?疑問が湧く。対局室のあるフロアへ行ってみて、歩いていた白川に声をかける。
「緒方は、今日は名古屋で棋聖戦の解説だよ」
「そんな…」
棋院のホームページで緒方の対局予定は確認できたが、解説まではチェックしていなかった。
「会いたいって連絡しなよ。飛んで帰ってくるよ」
白川は笑って言うが、それではサプライズではなくなってしまう。
1階に降りて、スマホを取りだす。
「今夜、会える?」
入力してから取り消して、メッセージを送信することはなかった。
重い足取りのまま帰宅して、家で今後の計画を練り直す。…今夜、精次さんの家へ行ってみようかな。棋聖戦が終わったら新幹線のダイヤを調べて、帰宅時間を見繕おう、と思いたつ。そして、棋聖戦の解説ってことは…ネットで姿が見られる、と気づく。
大きく映しだされる盤面の右上に、緒方の姿があった。星歌の送ったネクタイピンとポケットチーフを身に着けていて、心はあたたかくなる。
17時半過ぎに一柳棋聖が125手目を封じて、1日目の対局が終了した。…伯父さま、お疲れさま。星歌はそっと伯父を労う。やがて解説も終了した。
今から新幹線に乗ったとして、まっすぐ帰ってくると20時くらいには着くかな…。でも、途中で寄り道するかもしれないよね。あんまり遅いと迷惑だから、21時に行ってみよう…と決めた。