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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第23章 ○ 一柳家での正月 ●


 新年のスタートにふさわしい、清々しい青空が広がる朝。緒方は星歌を一柳家まで迎えに行く。昨夜と同じように門前に車を停めるが、約束の9時まで、まだ20分近くある。少し早過ぎたか…と苦笑いしつつ、車から降りてタバコを口にする。1本吸い終わったところで、門から星歌が現れた。
 星歌は小紋の着物にケープを羽織り、低めの位置でまとめた髪には小さなかんざしを飾っている。とてもきれいだ…緒方は思わず見入る。
「お正月だから着物にしちゃった。…どうかな…?」
 星歌は恥ずかしそうに微笑みながら、クルリと一回りして見せた。
「ああ、似合う」
 胸がいっぱいになり、それ以上の言葉が出てこなかった。
 
 神社までの道中、星歌はにこやかに窓の外を眺めている。
「雪、降らなくてよかったね」
「そうだな」
 緒方はハンドルを握りながら、何度も星歌の横顔を盗み見て、そのたびに胸を熱くしている。
 
 参拝を済ませておみくじを引くと、星歌の目が輝く。
「やった!大吉!」 
「オレは吉だ」
 星歌が緒方の手元を覗きこむ。
「お正月のおみくじって、みんな大吉だと思ってた」
「そんなことないだろ?」
「去年は私もパパもママも、伯父さまも伯母さまも健も、みんな大吉だったよ?」
「…オレは、去年は大凶だった」
「え、そんなことあるんだ」
 星歌はクスクスと笑いはじめた。緒方は少しムッとした声で返す。
「…うるさい」
「大丈夫だよ!大凶でも十段と碁聖を獲ったんだから。ね?」
 楽しそうな笑顔の星歌を見て、緒方の口元はゆるむ。星歌が隣にいてこんなふうに笑ってくれれば、それだけで最高だ。

 駐車場までの帰り道、星歌が言う。
「精次さん、今年もいい1年になるといいね」
「ああ」
 緒方は星歌の手を握る力を少しだけ強める。それは、星歌のことを絶対に離さないという決意の現れのようでもあった。
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