白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第22章 ● 幸せなクリスマス&大晦日 ○
緒方と星歌は2人でクリスマスを過ごしている。リビングでプレゼント交換をしたばかりだ。
星歌が差し出した小さな箱には、モノトーンのポルカドットが並ぶシルクのポケットチーフが収められていた。指先で布の感触を確かめて、緒方は微笑んだ。
「対局のときは必ず挿して、お守りにする」
星歌の頬がほんのり赤くなる。
緒方から星歌へのプレゼントは、クリスマス限定缶入り茶葉のギフトボックス。星歌が気に入りそうなぬいぐるみ付きだ。
星歌は缶とぬいぐるいを抱きしめるようにして言う。
「缶もクマちゃんもかわいい」
それだけで、緒方の心は十分に満たされた。
夕飯は、前々から星歌が1人で作りたいと話していた。エプロンを着けた星歌はキッチンへと向かう。
緒方はソファに座り、ぼんやりとその背中を見ていた。フライパンを振る動き、野菜を切る音、時折こちらを振り返る笑顔。それらの全てに、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「もうすぐできるよ」
星歌が告げると緒方は立ち上がる。星歌の背後に立ち、肩口から上半身を両腕でそっと包みこんだ。
星歌の体が一瞬、わずかに震える。エプロン越しに伝わる体温が、胸に伝わってくる。
「…精次さん?」
星歌の呼びかけには答えず、ただ強く抱きしめた。あごを肩に載せて髪に鼻を埋めると、甘いシャンプーの香りに、頭が軽くクラクラとする。
星歌の鼓動が背中を伝って、自身の胸にも直接に響いてくるように感じられる。2人の鼓動は同じくらい速い。
「…ちょっと…恥ずかしいな…」
「オレたちだけだ、誰も見てない」
腕の力を少し強め、唇は首筋に届きそうなところで止める。触れてしまったら、もう引き返せないと分かっていた。
「…パエリア、焦げちゃう…」
「…もう少しだけ」
星歌の体温を、吐息を、全て味わうように抱きしめ続けた。
やがて星歌が小さく身じろぎする。
「…本当に焦げちゃうよ?」
先ほどまでとは異なる、軽妙な口調。
名残惜しくも腕を解くと、星歌はチョコチョコと歩いてコンロの火を消してから振り返る。頬は赤く、瞳は潤み、穏やかな笑顔。星歌を独り占めしただけで、緒方にとって完璧なクリスマスだった。