死んだと思ったら文ストの福地桜痴♀に成り代わった様です
第1章 その女、転生する。
(嗚呼、これ死ぬ………痛いし、なんか別のこと考えよう……それにしても存外呆気ないなぁ…あ、そういえば家の鍵かけ忘れてた…それにゲームも負けて終わってるし…この後、友人に土下座して謝って遊ぶはずだったんだけど…)
女はポツポツとやってなかったこと、やりたかったこと、やるべきであったことを思い出しながら、眠くなってきたのか静かに目を瞑ろうとし———瞑りかけた瞼がスマートフォンの着信音で上にあがった。
(”風が吹く街“…)
頭が動かせないので目線だけを動かすと、頭上に画面がバキバキに割れた原型はぎり保ったスマートフォンがあった。
『私の着信音は“風が吹く街 ”にしてよね!』
はじめて誰かと連絡先を交換して観劇していた時、友人がそう言って微笑んでいたのを、ふと思い出してしまった。
『ーーちゃんも読んでみてよ!読むのが嫌なら私が読み聞かせするから!!!』
そう言って、漫画と小説片手に捕食者の目をしてにじり寄って来た友人。
『ねぇ!聞いてよ!!最推しが死んだ!!!ガッテム!!!!』
スマホの画面に最推しを映し泣きながら縋っていた友人。
『ふぁっ?!?!あ、アニメ化だとぉっ!?!?推し達が動いてくれるのかっ!!というか、我が推し達の声優が良すぎなのだが!!神!!!よし!今からグッズ買いに行こう!!!!』
この間まで、推しが死んだと泣き喚いていた筈なのに行成元気になり、グッズを買い求めに旅に出たりコラボ中の喫茶店に行っていた友人。
そんな、しょうもない様な輝かしい日々が脳裏によぎる。走馬灯、友人しか出ないな…と思いながらも、それを嬉しそうに眺める女。
(あー…死にたくないなぁ…)
友人を思い出す度、友人が出る走馬灯が再生され続ける度、死にたくないと願ってしまい、段々ぼやけてくる視界に小さな絶望を繰り返す。
「…し、にたく…ない…」
(もっと、もっと、遊びたい。家から出て色んな所に出かけたい…恋愛だってしたい…、まだ私は———)
女の閉じられかけた瞳に微かな光が差し込んだ。痛くて痛くて仕方がないけど、光に寄せ付けられた虫のように、その微かな光にあられもない手を伸ばす。
———その瞬間、光は強くなり、女の体を周囲ごと飲み込んだ。