• テキストサイズ

【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第44章 おいでとさぼり


東京の中心部は、紅海が普段暮らしている場所とはまるで違っていた

大きな建物がいくつも並んでいて、歩いている人たちも少し急いでいるように見える

紅海は、浅葱の手を握って歩いていた
「はぐれちゃいけないよ」
『うん』
「今日はちょっとだけ、大人の話をするからね」
『……うん』
「その後に、買い物に行こう」
紅海は素直に頷く

浅葱が東京の中心部まで連れてきたのには理由があった

紅海の呪力…それについて、相談したい相手がいた
けれど、その話を紅海の目の前ですることは、どうしてもできなかった
まだ五歳だが…きっと察するだろう
この子は、両親を亡くしたばかりなのだから


「ここで待っていられるかい?」
浅葱が立ち止まったのはキッチンカー並んだ広場だった

『ここ?』
「そう、ちょっとだけ用事があるからね」
紅海は周囲を見回す

『ひとりで?』
「すぐ近くにいるよ」
 浅葱はしゃがんで、紅海と目線を合わせた
「紅海なら大丈夫だろ?」
『……うん』
「何か食べたかったら、お店の人に注文して、お金を払うんだよ、ほら…お金はここにあるからね」

小さな財布を渡される
『使っていいの?』
「もちろん」
『…何でも良いの?』
「おや」
 浅葱が少し笑う
「珍しく欲が出たねぇ」
『…だめ?』
「駄目なわけないだろう」
紅海の頭を撫でる
「でも、食べすぎると晩ご飯が入らなくなるからね」
『じゃあ、一個だけ?』
「そうだね、一個にしな」
紅海はこくんと頷いた
「いい子だね、じゃあ、ここで待ってて」
『うん』
浅葱が離れていく

椅子にちょこんと座り
背が届かずぶらぶらと足が揺れる

いろんな人がいっぱい歩いている
けれど、一番気になるのは
その中に、時々混じるもの…
黒い影だったり、歪んだ顔だったり…
人の肩越しに、こちらを覗いているものもいる
呪霊だ…

紅海には昔から見えていた
だから、それを見ても特に騒がないし、恐怖心もない
ただ…
「…あ」
と、小さく声を漏らす

少し離れたところに小さな呪霊がいた
こちらを見ていると目が合い
呪霊はゆっくりと手を動かした

 おいで
 おいで

まるで友達を呼ぶように

紅海は首を傾げる
「……?」
/ 513ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp