第44章 おいでとさぼり
浅葱は呪霊に、シッシッと手で払う動作をしつつ
「まあ、あれは近づかなければ大丈夫だよ」
『……そうなの?』
「そう」
『じゃあ、触ったらダメ?』
「駄目」
『……なんで?』
「いいから、遊ぶなら、もっと可愛いものと遊びな」
浅葱は部屋に戻り、押し入れに置いてあった古いぬいぐるみを紅海に渡した
「ほら」
『……』
紅海はぬいぐるみを、ギューッと抱き締める
呪霊より、こっちの方がいいらしい。
『……ふわふわ』
「だろ?」
紅海はぬいぐるみを膝に乗せた
少しして
「おばあちゃん』
「ん?」
『これ、紅海の?」
答えに少し困った…
紅海の母が幼い時に持っていたものだったから
長い説明はせずに「そうだよ」と、答えた
『……ずっと、紅海ので良いの?』
「そうだよ」
紅海は嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめた
夜になると、皿洗いのの手伝いをしながらあくびをする
「紅海……明日は買い物にでも行こうか」
『……一緒に?』
「もちろん」
『……行く』
少し考えてから、紅海が付け足す
『おばあちゃんと一緒にお買い物、嬉しい』
浅葱は一瞬だけ目を細めた
「そうかい」
嬉しそうだった
「じゃあ、一緒に行こう」
『うん』
お皿を片付けたら、紅海は浅葱に促されて自分の部屋に戻る
布団に入ったのを見て、浅葱が部屋を出ようとする
『おばあちゃん』
「ん?」
『……おやすみなさい』
「うん、おやすみ」
襖が閉まる
紅海は布団の中で、少しだけ笑った
ここには、お父さんはいない
お母さんもいない
それでも
朝になれば、おばあちゃんがいて、ご飯を作ってくれる
庭には変なものがいるけれど、おばあちゃんが守ってくれる
自分が笑えばお祖母ちゃんが安心して笑ってくれる
だから、寂しいけれど今はそれで十分だ…
紅海は目を閉じた
少しずつ…この家が、自分の「帰る場所」になっていった