第43章 付添いと弁当
夕方…日が傾き始めた頃
演習場から三人が出てくる
灰原は疲れ切っている
「つ、疲れた…」
『お疲れ様』
紅海が笑う
七海も制服についた土を払う
「ですが、思っていたより自分の弱点が分かりました」
『それなら、今日来た意味はあったね』
山道の先に夜蛾が待っていた
「ご苦労だった…怪我は?」
『ありません』
紅海が答える
夜蛾は一年生二人を見る
「今日、経験したことは、忘れるなよ?」
「はい!」
灰原が返事をする
七海も頷いた
夜蛾は紅海を見る
「流鏑馬もご苦労だった」
『はい』
「弁当まで作ったらしいな」
『あ、はい』
紅海は少し照れたように笑う
『長いですから、食べないと集中力落ちちゃうので』
夜蛾は一瞬だけ紅海を見る
「そういうところがお前を選んだ理由だ」
「え?」
紅海が目を瞬く
夜蛾はそれ以上説明しない
『今日は終わりだ。二人とも、宿舎に戻って休め』
「はい!」
灰原と七海は一礼する
少し離れたところで、灰原が紅海を見る
「紅海さん」
『ん?』
「またこういう訓練、やりたいです!」
『うん、じゃあ、次はもっと難しくしようか』
「えっ」
灰原の顔が引きつる
七海が横で小さく息を吐いた
「自分から言ったんだろ」
「そうだけど!」
紅海は二人のやり取りを見ながら、へにゃっと笑う
朝よりも、少しだけ、二人との距離が近くなった気がした
食堂
五条たちは先日の実技訓練の話をしていた
「それで紅海さん、がずっと見てくれてたんです!」
灰原が嬉しそうに話す
「お昼には、お弁当まで作ってきてくれて、一緒に食べたんですよ!」
「ふぅん」
五条は箸を動かしながら、軽く聞き流す
何となく面白くない
紅海が褒められているからか
先輩風を吹かせているのが気に入らないのか
それとも、他人に弁当を作った事がなのか
その感情には、まだ名前をつける気もなかった
そこへ紅海と夏油がやって来た
「何の話?」
夏油は購買のパン
紅海は透明なプラスチック容器の弁当を持っている
「この前の演習場です、紅海先輩がお弁当を作ってくれて!」
『ああ、その話か』
紅海が笑う
『長丁場だったからね。食べるのも大事だしね?』