第3章 静けさ
声に驚き行きよいよく振り返る。
「すまない、驚かせるつもりはなかったんだ。その気になって。」
迷子になってたことではなく、私が口づさんでた伝承の方が気になるとは。
「母の生まれ故郷に伝わる昔話ですわ。どこにでもある平凡な、変な話ですわ。」
少し遠い目で宇宙空間を見つめる。
イザークはいつもの明るく無邪気な彼女とは違いどこか大人っぽい表情、仕草にどきっとした。
「いや、そいういった話が好きなんだ。大学で民俗学を専攻に学んでいたこともあるぐらい。」
白服を靡かせながら宇宙空間を漂い、セレンの隣何ならぶ。
「なんだ不思議か??」
「ええ。そういったものは嫌いなんじゃないかと思いまして。」
「なぜ?」
「だって、神様とかそういったもの信じなさそうですもの。」
「信じる信じないの話じゃない。その土地でどんなことが禁忌とされてたのか、深く調べると土地柄が関わっていたり。どういった考えで生きてきたのか、過去と現在を繋ぐ貴重な架け橋だ。」
ちらりとイザークの横顔を眺める。
悪い人ではないのは十分わかってる。
「そうじゃない!どうして急にいなくなったんだ!」
思い出したようにイザークが声を上げる。
「ご、ごめんなさい・・・。あんまり宇宙に来たことがなくて・・。無重力に慣れなくて。そうしてるうちに、その・・。」
「まぁいい。行くぞ」
差し伸べられた手を取る。
「今日はもう帰ろう。明日はミレにアムの進水式とそのパーティーがある。明日に備えてゆっくり休もう。」
「わかりましたわ。一緒に帰ってくださいますか?」
「すまない、まだ仕事が残っている。帰りはシホとディアッカに送らせる。」
握った手に少し力を込める。
「仕方ありませんわ。おとなしく帰ります。」