第8章 ボクシング・デー
「私は」
震える声を一旦止め、息を吸う。
「私はレノがいるならそれでよかったの」
一気に吐き出された言葉に、レノがしっかりと彼女を見定める。
「たぶんタッチミー食べながらミッドガルズオルムの話してても楽しいわ」
「んだよ、それ」
「思いついたのがそれしかなかったのよ」
レノが鼻で笑う。
そして、諦めたように転がり、天井を見上げる。
「……変わってんのな」
「変わってるのよ」
しばらく続く沈黙。
破ったのはレノだった。
「なあ」
「なに?」
「オレ、怪我して動けねえんだ」
ふっと小さく笑いがこぼれる。
「そうね」
レノの視線がゆっくりと戻る。
「アグレイス」
呼ばれ慣れた名前が、やけに静かに響いた。
「アンタから、こっち来てくれ」