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【FF7】ボクシング・デー

第8章 ボクシング・デー


「……いいや」

言いづらそうにレノが口ごもる。

「柄にもなく、浮かれてたら、ミスった」

「浮かれてたの?」

アグレイスは息を吸うのも忘れる勢いでレノに向く。

「そいつのお陰で命拾いした」

レノはボトルに口づけて一気に水を煽った。

「なんでこんな」

わなわなと震えながらアグレイスは手の中の冷たい金属を握り締める。

「全部言わせんなよ」

空になったボトルがくしゃりと形を変えた。
アグレイスは呆然とその様を眺め、ややあって、ぽつりとこぼした。

「……これ、私のよね」

レノが顔をしかめる。

「私のよ」

祈るようにもう片方の手も添える。

「はぁ? んなゴミいらねえだろ」

「これがいいの」

即答だった。
アグレイス自身が驚くほど、迷いがなかった。

「新しいの買ってやる」

「これがいいの」

レノの舌打ちが響く。

「なんでだよ」

「レノを守ってくれたもの」

アグレイスは温まった歪な輪を指でなぞった。
レノは何も答えない。

静かになった部屋に、彼の苦痛の声と寝返りに耐えるベッドがきしむ音が響いた。

アグレイスは赤毛が伸びる背に、胸の奥の息苦しさを吐き出した。

「私、今日別れるって」

レノが傷口を庇いながら半身を上げた。

「なんでだよ」

低い声。怒りを滲ますように眉が動く。
アグレイスはうまく笑えないまま、視線を落とした。

「だって、最近全然近くに来てくれないから」

レノが短く息を吐く。のそりとした動きで伸ばされた手は、彼女に届く前に落ちる。

「……あれだけになんの、違ぇだろ」

ぽつりと落ちた声。

「だから距離を置いた」
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