第1章 とある島にて
「ラスト1周!終わった者から測定に入れ!」
教官の怒声がいつものように響く。
決められたトレーニングをこなし、身体能力を数値化され、また新たなトレーニングが追加される。
窓はない。数字で提示される時刻だけが頼りなため、今が昼なのか夜なのかも正確なところはわからない。
けたたましいアラートで目を覚まし、過度なトレーニングをこなし、決められた配給を食べ、硬い布団で体を擦りながら眠る。
ここにいる大半の少年達は、この囚人のような暮らしを送っている。
測定値さえクリアすればある程度の自由が認められはするが、例外に『なった』僕や一部の優秀なシード達と数えられる程度にしか該当者がいない。
ようやく取れたヘッドギアのない頭の軽さには、未だに違和感を覚える。
「ここにいたのか、夜徒」
「……白竜」
純白に輝く白髪をひとつにまとめた、顔立ちの整った少年。
白竜と呼ばれている彼の名も、本当の名なのかすら知らない。
__この島で間違いなくトップの成績を持つ彼と何故接点があるのかを話せば長くなるので、またの機会にしよう。
「聖帝直々のお呼び出しだ」
「イシド様がお見えになられているの?」
「あぁ。お前に直接命を下す為とは考えにくい、何か他の用での来訪だろう」
「……ふふっ」
思わず笑いが零れてしまい、壁に背を預ける彼の眉が動く。
失礼、と右手を止まれの形にして上げた。
プライドの高い彼が大人しく伝言役をしているのが、なんだかおかしかった。
聖帝からの言伝でなければ絶対に大人しくは従っていなかっただろう。
「ありがとう、白竜。呼びに来てくれて。寝るにはまだちょっと早いけど、おやすみって言っておくね」
「あぁ。明日も早いからな」
白竜に礼を告げて、長い廊下を反対方向に歩き始める。
縦にも横にも長く深い造りのこの建物は、いくら歩いても歩いた気がしなくて苦手だった。