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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第19章 怒濤



 ✜

「はあ、月子ちゃん、かわいすぎるっ」

ニコニコと愛想が良く、子どもらしく可愛らしい忍足夫婦の長女。
思わぬ癒しに、事務所に戻った繭結は、午後も頑張ろう、と給湯室でコーヒーを淹れる。


「なんじゃ、子どもでも欲しくなったか?」
「はぎゃあっ!」

ビクゥッ!と跳ねた繭結の手から、使い捨てのインサートカップが落ちた。

「まっまさは...仁王さんッ!」
「律儀じゃのぉ。
 なんなら『まー君』でいいぜよ」
「いや、あのここ、職場なんでっそれに、一応、あなた、先輩と言うか上司ですからね?
 そこは弁えましょうよ」
「真面目じゃなぁ」

狭い給湯室で、する、と腰に絡んできた腕に、ちょっと!と慌てる。

「『職場恋愛』には、慣れとるじゃろう?」
「そういう問題じゃないからっ
 離してください!」
「いつまで敬語なんじゃ?」
「だからっ職場!
 ここ、仕事するところですっ」

腹のあたりで手を組み、ピッタリと背中にくっついて肩に顎を乗せる雅治。

ちょっと、と後方を見上げた。

「んぅ」

顎下あたりに添えられた左手に、首を反り返す。

「や、」

無理やり捩じ込むように入ってきた舌に、身体をよじって藻掻く。

「ふっ、やらっん...ダ、メ」

逃げようと何とか一歩踏み出すが、容易くシンク台へと追い詰められ、逃げ場を失った。
囲うようにシンクにつかれた雅治の両腕を掴む。

たっぷりと口腔内を弄ばれ、ようやく離れたかと思うと、首筋に顔を埋めてきた。


「ね、ダメって...」

軽く皮膚を吸い上げられ、ん、と声をもらす。
なかなか離れない雅治に、えっと、とまごつきながら、恐る恐る背中に腕を回す。

「雅治さん...か、帰ってから、に、しよ?」

お願いします、と彼の耳元で言うと、深く息を吐いた。


「言うたな」
「...この詐欺師っ」

ニッコリと笑う雅治。

「あれ?
 イリュージョン、やめたんですか?」
銀髪の彼を見上げて首を傾げる。
「繭結は俺の恋人ぜよ。
 いくらなりすました自分と言え、他ん男に触らせん」
「いや、でも、それは雅治さんですよね?
 ややこしいな」
「男心を知りなっせ」

昼、終わるぜよ、と軽く頭頂部にキスをして給湯室を出て行った背中に、(やっぱり『甘い』んだよなぁ、)と、口づけられた部分に触れた。

 ✜
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