第19章 怒濤
ふー、と息を吐き、行きますっ!と携帯を手に取った。
「そがに気合がいるもんかのぉ」
「いるんです」
携帯を操作する繭結の指が、あれ?と止まる。
「父がいいんでしょうか?
母がいいんでしょうか?」
「好きにしんしゃい」
クツクツと笑い、テーブルに腕をかける雅治の向かいで、じゃあ母、と携帯を耳にあてた。
-はーい、もしもし?-
「あ、母?
私、繭結」
-うん、あだんしたん?-
「えっと、ちょっと急なんだけど、その...
会ってほしい人がいて...」
-えー?あに、急に?
ひょっとしりゃ、嫁ごか行く?-
おやぁ、と笑う母の声に、えっと、と続ける。
「うん」
-うれっ!-
うるさっ!と携帯を耳から離すと、おとさーん!と大声が聞こえた。
「おとさんには言わんばっ!」
ねえ!と叫ぶ繭結の声も虚しく、繭結?と電話の声が父に代わった。
-かちょうち男?-
「えー?
年は29じゃ。建築関係の仕事しとるけ」
-土木屋んか?-
「建築士さんじゃ。
事務所に勤めてらすよ」
-勤め人ね?-
「おー」
シンプルなネイルアートが施された指先を見ながら話す繭結。
「なぁ、最近せー、どこさいる?」
-さぁ...
1カ月くらい前には、韓国おったさ-
「韓国ッ!?」
とうとう国内にすらいなくなったのか、と驚く。
-メールの来て、韓国さおるから色んなモンこっち宛にくるよぉしとぉけん、受け取っとけさ言われとるよ-
どんだけ自由なんだ、と呆れと驚きを通り越して、フットワークの軽さには感心する。
-せーが気になるん?-
「あー、その...」
ちら、と雅治を見る。
「結婚せよかなぁ、思っとるけ...その、顔合わせる?とか」
-ああ、そやんねぇ-
「とりあえず、おとさんとおかさんには会いに行かんばなあ思いよっけ」
-あ、来月な、けいちゃんの結婚式でそっちさ行くさ-
「え?いつ?」
-24日の船で行って、25日に式出る-
「待ってん」
電話を耳から離し、雅治を見る。
「来月の24日か25日って...」
「空ける。
繭結の親の都合がええ日にしんせぇ」
ありがとうございます、と電話を持ち直した。
✜