第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
「……はぁっ、はぁ……」
白い息を吐きながら、繭莉が凍りついたビルを見上げた。
「……ビルの中の人、凍ってない……!」
少し泣きそうな顔で呟く繭莉を見て、勝己は一瞬だけ僅かに頬を緩ませた。
それに気付いた瞬間、なんだかものすごく恥ずかしくなってしまう。
「やりゃあ出来んじゃねぇか。中の奴ら救けに行くぞ」
恥ずかしさを散らすようにそう言うと、座り込んでいた繭莉の腕を掴んで立たせた。
「……はい」
2人が氷の世界になったビルの中に入ろうとした、その時だった。
「ねぇ、あれ爆豪じゃない!?おーい爆豪!」
どこからか声が聞こえて振り向くと、声のした先にはヒーロースーツに着替えた芦戸三奈が手を振りながらこちらに来るのが見えた。
「話しかけんな!今忙しんだよ!」
「地震ヤバかったね!っていうかここ寒っ!」
「ホントだー!あー、すご!ビル凍ってる!」
透明なので分かりずらかったが、三奈の隣にいたらしい葉隠透が暢気に言った。
「え、でも轟違う所に緑谷達といるよ?他の人がやったの?」
三奈が首を捻っていると、上の方から「ダイナマイト!」と声が降ってくる。
「皆さん無事です!今、連れて降ります!」
勝己達がだべっている間にビルに入っていったのか、繭莉が窓から顔を出していた。
「え、もしかしてあの子?このビル凍らせたの」
「すごいね~!轟くんみたい!っていうかさっきちょっと見た気がするんだけど」
「……あぁ。上鳴のサイドキックだってよ」
勝己は上を見上げながら言った。
「あれ?爆豪なんでニヤついてんの?」
ニヤついてるはちょっと語弊があるが、勝己の口元はまだ少し緩んだままだったらしい。
三奈にツッコまれて、恥ずかしさが一気にこみあげてくる。
「っせぇな!誰もニヤついてねぇよ!殺すぞ!」
ギッと三奈達にガンを飛ばすと、彼女達は「わ~怖い!」と言いつつも顔は笑っていた。
「……てめぇら来たんなら色々手伝えや」
これ以上キレ散らかした所で彼女達にはなんのダメージもないと悟った勝己はバカにされている事を諦めてそう言った。
「はいはい!」
「っていうか爆豪くんヒロスはー?」
「ンなもん着替えるヒマなかったんだよ!」
やがて、そこかしこから救急車のサイレンが聞こえ始めた。