第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
恐らく火事になったというビルが、フラッシュオーバーを起こしたのだろう。
息を吸うのも熱い程、辺りが熱に包まれた。
「まずい……まだビルの中、人がいるって……!」
「焦んな!取りあえず救けんぞ!煙吸うなよ!」
「はい!……っ」
炎に包まれたビルに足を踏み入れようとしたが、もう熱が迫っていて中に入るのは困難かもしれない。
「ダイナマイト、これ……」
「あぁ。……ヤベぇな」
取りあえずビルの中に取り残された人とコミュニケーションを取ろうと、繭莉が声を張り上げた。
「聞こえますか!もし出来たら窓の外に顔を出していただけますか!」
すると、何人かの人が窓から身を乗り出した。
見た限りでは、3階に1人、5階に2人。
火の出所らしき所はどうやら2階のようだ。
「ここに入んのはリスクがデカすぎんな……おい」
繭莉の方を見ると、彼女は勝己が何を言おうとしているのか察したらしく顔を青ざめさせた。
「人だけ避けて、ビル全体を凍らせろっておっしゃりたいんでしょうが……私にコントロールできるかどうかは分かりません……」
「出来る出来ねぇじゃねんだよ。……やんだよ」
繭莉の身体は、カタカタと震えていた。
「でも……救けられなかったら……私……」
きっと、高校のインターンの事を思い出しているのだろう。
「思い出してる場合じゃねぇだろ」
「っ!」
「今度は、救けんだよ」
勝己が強い口調で言うと、繭莉は漸く意を決した表情になる。
「……やって、みます……」
そして、地面に両手をつくとバキバキと氷の柱が地面に生えていく。
やがて氷は燃え盛るビルを覆い始め、3階部分に達しようとしていた。
力がブレれば、要救助者まで凍らせてしまう。
そんな繊細なコントロールを、インターンしか受けていないブランクのありすぎる繭莉に出来るだろうか。
だけど、勝己は繭莉を信じた。
確証はないが、彼女なら出来ると信じたかった。
「……っ……」
窓から身を乗り出した人が、上を見上げた。
「……あ……!」
その人は、凍っていなかった。
無事に、人を避けて氷は4階にまで達していった。
やがて、炎に包まれていたビルは今度は氷に包まれた。
繭莉の口から、白い息が漏れた。