第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
「話それだけだったら、切んぞ」
『いやっ、マジでサンキュー爆豪!じゃあな!』
通話終了のボタンを押しながら、勝己は軽く息を吐いた。
アイツ、ヒーローになんのか。
まぁ……やりてぇ事あんなら?やった方がいいし?
いんじゃね?
そう思いながら書類に目を落とす。
だけど、繭莉の話題を出されてしまったら、どうしてか思い出してしまったのだ。
あの日の、僅かに微笑んだ彼女の顔を。
「……っだよ……」
思い出してしまったら書類の内容なんて一切頭に入って来なくなってしまって、机の上にそれを乱暴に置いた。
……なんだ……
アイツの事、こんな気にして……おかしくねぇか?
マジで、笑っただけだぞ?
……あ。
悶々とした所で、更に思い出す。
結構前に、幼馴染の緑谷出久と話した事を。
『かっちゃんの言う通りだったかもしれないな』
『あ?何がだよ』
『いやね……今まで、気付けるものも気付けてなかったなって』
『……それかよ』
『ありがとねかっちゃん。気付くって、大事だよねぇ』
そこまで思い出した所で、勝己ははっとなった。
気付く……?
俺……何か重要な事、気付いてねぇのか?
気付い……気づ……
……あ……
……繭莉が、笑って……
アイツ……まぁ……アレだ……
「……かわいかったな……それなりに」
事務所には自分しかいないのに、消え入りそうな声で独り言を言ってしまった。
ついに、勝己は繭莉がかわいいと、認めてしまった。
勝手に顔が熱くなるのを感じて、まさか自分がという気持ちでいっぱいになってしまう。
「あー……マジかよ……」
そこで、自分がすっかり恋の沼に落ちている事に気付く。
「……ヤベぇわ……」
勝己は、机に突っ伏した。
デクにあぁ言っといて、自分では今まで気づかねぇとか……
マジで、どうかしてんな。
いや……つうか……
気付いた所で、どうすんだ?
それは……
「分かんねぇ……」
突然、気付いてしまった初めての感情。
その感情を、どこに向ければいいのか。
考えても考えても、全く分からなかった。