第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
そして、インターンが始まって、3日目。
「その日、事務所に連絡がきたんです。災害救助の依頼の連絡が」
その日は、ヒーローと繭莉しか事務所にいなかった。
『行こうか、繭莉ちゃん』
そう言って、彼はヒーロースーツのマントを翻して事務所を出て行く。
後をついていきながら、その後ろ姿がどこか眩しく感じて繭莉は目を細めた。
早く、自分も彼と同じヒーローになりたいと強く思った。
その時は。
災害現場に着くと、その現状は思っていたよりひどかった。
数々の人が怪我をして、泣いている子供もいた。
『もう、大丈夫です!ヒーローが来ましたから』
繭莉は、困り果てる人達に笑顔でそう言った。
最初に目に入っていた、瓦礫に足を挟まれてしまっていた人の救助をしようと瓦礫に手を付けた、その時だった。
『危ない!繭莉ちゃん!』
ヒーローの声にはっとして空を見上げると、コンクリ片が無数に落ちてきた。
到着した時、今にも崩れそうだったビルが突然崩れたのだ。
『……あっ……!』
繭莉は、咄嗟に助けようとしていた人を庇おうとその人に覆い被さった。
『……っ……?』
瓦礫に押し潰されたはずなのに何も、痛みがない。
それどころか、身体に何か温かな感触を感じる。
『な、んで……っ!?』
繭莉は、漸く気付いた。
自分達を庇うように、ヒーローが上に覆い被さっていたのだ。
『そんな!』
『……繭莉、ちゃん……無事だね……?』
ヒーローは、弱々しく微笑んだ。
『待っててください!今、瓦礫どかします!』
『いいんだ』
ヒーローの血で濡れた繭莉の手を、彼が掴んだ。
『自分でも分かる。……僕は、もう』
『やめてください!今、救けるから!』
『……繭莉ちゃん、君は……ヒーローに……』
その言葉を最後に、ヒーローは動かなくなった。
「彼が、何を言おうとしたのか……今でも分かりません。ただ、思ったんです」
全てを吐露して、ぎゅっと手を握った繭莉の目には、うっすら涙が溜まっていた。
「私はもう、あんな思いしたくない……って。……無理です、ヒーローなんて……私は、もう笑顔になんて……なれないから」