第2章 初めて見る顔
明らかに顔を隠す。
さっきまで目元の涙を払っていた手を下げて、拭わずに、ただ俺から顔を背けて立ち尽くす。
泣いていたことを無かったことにでもするつもりなのだろうか。今更取り繕ってももう見てしまったというのに。
「ねえ」
「…」
「っねえ……」
震える肩を掴んでいた手を離して、そっとその小さな手に添える。初めて触れた。俺に笑いかける度に何気なく振ってくれたその手は、柔らかくて、湿っていて、それでいてやけに冷たかった。
「…」
倉庫裏は砂まみれだ。一歩歩けば砂埃が舞う。
けれど、他に行く場所も無い。
俺は手を握ったまま、地面に腰を下ろした。
ただ、黙って手を握って、まっすぐ前だけ見つめた。歪めていたその顔の方に目は向けない。
ちょっと…と声が聞こえてくるが、返事の代わりに緩く手に力を込めた。そうして少しすると、○○は観念したように俺の隣に腰を下ろす。