第2章 初めて見る顔
「………あ、ごめん」
「……」
誰もいない体育館倉庫裏。
昼休みに練習しようと訪れたら、あの世話焼きでお節介で、いつも周りに人がいて、屈託なく笑ってたあいつが、また違う顔をしていた。
「ごめ、ちょ…ごめんね本当、すぐ…どっか行くね」
真っ赤だ。目に浮かんだ大粒の涙が、何度も頬を流れていたことが伺える。その度に擦ったのか、頬も鼻も、当然目も、熟したのかと錯覚するほどに赤くなっている。
「あとでね」
止まらない涙で視界が悪いのだろう。何度も目をこすりながら弱々しい足取りで去ろうとする。
俺の横を通り過ぎようとする時に、どうしてか俺は、その細い肩を掴んでいた。これは、多分、反射だ。
「…練習しにきたんでしょ」
「…まあ」
「聞いてるよ、すごい頑張ってるって」
「…おう」
「…まあ、そんなの見てればわかるけど」
「…」
「………離してよ」