第1章 狂犬
後ろの出入り口から、声をかけてくる一人の女子生徒。
名前は…
「次!音楽!合唱祭近いから今日は多目的室だって!どうせ誰からも教えてもらってないでしょ!」
「…」
「ちゃんと出てよね。部活やるんなら授業も受けなきゃでしょ」
「……」
△△ ○○。
一年の時から、こいつだけはずけずけと話しかけてくる。
物怖じしないというか、正義感が強いというか、なんというか。
逆らわないほうがいい、というより、言うことを聞かされてしまう感じがある。
「はい行くよ!楽譜…は無くていいや、歌詞持ってってせめて!」
「…」
「今はいいけど、多目的室着いたら嫌そうな顔しないでね!」
「…」
「この顔元々ですとかフォローしてあげないからね!」
…と、まあ、うるさい。
ふざけているのか真面目なのか判断がつきにくいところもまた厄介で毎度何も言えなくされる。
世話焼きなようで、手放すところは手放してきて、面倒見が良いと言った方がいいか。多分、しっかりした人間なんだろう。