第5章 カミングアウト
玄関先でぎゃーぎゃー騒ぐ私たちを、近所の人はどう思うだろう。「また仲がいいねえあの子達は」「昔っからずっとねえ」なんて、笑ってくれるのだろうか。
少しだけ大きな声を出して、口を尖らせながらぶつくさ言う徹を見ていたら、なんだかおかしくて、急に笑いが込み上げてしまった。
「……ふふ、ありがとね、徹」
「え、急になに、てか、今の流れで?」
「言わない」
「はあ!?」
ずっと前から、はーくんの気持ちにも、私の気持ちにも、気づいていたはず。でもそれを言わなかったし、どちらかにアシストするでもなく、きっと誰よりも1番近くで私たちのことを何も言わずに見守ってくれてた。
本当に感謝している。
でも、そんな細かいことは何故だか腹が立つから言わない。
言わなくてもどうせ気づくんだろうし。
「またね」
「うん、気をつけて帰るんだよ」
「なんかあったら叫ぶ」
「そうして」
徹の家を出て、夕方の冷えた空気を胸いっぱいに吸い込む。道中横切るはーくんの家を眺めながらどこか晴れやかな気持ちで、私は自宅の扉を開けるのであった。