第6章 2つのリスタート
朝練を終え、教室に入ると中はいつにも増してどよどよと騒がしかった。
何事かと気にしても、俺には話が振られることはない。黙って自分の席に向かい、腰掛けるとどよめきのど真ん中から、聞き慣れたあの声が俺を呼ぶ。
「京谷!」
「……………お前」
「へへ、おはよ。ばっさりいっちゃった。どうかな?」
見慣れた顔が、見慣れない髪型をしてこちらを覗き込んでいる。ものすごく、髪が短くなった。想像していなかったその姿に自分の心臓がどきりと動くのがわかる。
可愛い、とか言うんだろうか。いや、でも、そんな言葉。もだもだ考えていると、時間だけが過ぎていく。
「ま、びっくりだよね」
そんな俺の気持ちを察してか、そう一言言って、○○も自分の席に戻ろうとする。俺はそれを引き止めたかったのか、理由はわからない。けど、
「いい」
とだけ、思わず口をついた。
○○は一瞬キョトンとした表情を浮かべたが、またあの笑顔を見せて「ありがと」と言った。