第5章 カミングアウト
自然と笑みが溢れてしまう。
どうしたらいいかわからない、とでも言いたげな表情を浮かべるはーくん。本当に昔から何も変わっていない。とにかく真っ直ぐで、意外かもしれないけど、バレー以外のことは思ったより周りが見えていないところとか。
その代わりに徹が見てくれているからバランスが取れているんだろうけど。
「だからね、追いかけっこ、やめる」
「…」
「これからも幼馴染としてよろしくね」
「…ああ」
ーーーやっと言えた。
どうやら私は、自分の中にダムを作っていたようだ。この人が好きという気持ちを貯めるダムを。
その栓を今、やっと開けられたような気がする。水は流れて、でも私の中で生き続ける。この気持ちを、今までの思い出を、無かったことにするんじゃない。
流すことで、私が一歩踏み出す水流を生むんだ。
笑って、手を上げた。
しゃーねえなと言いながら、はーくんのいつでも温かい手のひらが私の手のひらをパンと叩く。
その音が切り替えの合図。
あなたを追い続ける私から、変わるための。
長かった私の初恋はこうして幕を閉じた。