第2章 初めて見る顔
でもそれは起きない奇跡で、どれだけ距離を深めても、それよりももっと距離を深めている存在がお前には居て、届かなくて。ただ、焦がれるしか出来なかった。
ーーーわかる。
言おうとしたらチャイムが鳴った。
ありがとね、と言って、○○は俺の手を2回、きゅ、きゅと握って去って行った。
その後教室で会った顔は、赤くなってはいるものの目立たなくなっていて、いつもの調子で笑っていた。
勿論、俺は誰にも昼休みのことを話さない。まあそもそも話すような相手もいないし、本人は去ろうとしたのを俺が無理矢理引き止めて聞き出してしまったわけだし(あんなに話してくれるとは思わなかったけど)。
数日後、靴箱に小さな箱とメッセージカードが入っていた。
ーーーこの前はありがとう。ほんのお礼です。
誰の入れ知恵か、プロテインバーの詰め合わせ。気遣いの裏に隠れたあの人の影がこの時だけはひどく鬱陶しく感じた。