第2章 おうちデート、ただし条件付き
「ん、何味?」
「ストロベリーチーズケーキ。おいしい?」
「うん、最高だね」
カナタはお気に入りの味を褒められただけで、満足げに笑った。
「ねえ、あたしもバニラちょうだい」
「僕のなんだけど」
「けち。あたしが買って用意したのに」
「仕方ないなぁ」
もったいぶりながら、今度は天使の悪魔がカナタにバニラを食べさせる。
「んーー、バニラはアイスの主人公だよね」
「そうかもね」
スプーンに触れたカナタの唇が妙に色っぽく映り、平静を装って映画へ目を向けた。バニラを自分の口に運んで、後から間接キスだと気づいてしまうと、なぜだか急に落ち着かなくなり、誤魔化すようにもう一口バニラをすくった。
アイスを食べ終えた頃、映画はちょうど、ゾンビが美少女に襲いかかる有名なシーンに入った。哀れな美少女は、悲鳴を上げながらゾンビの餌食になっている。
人間もこれを見ておいしそうと感じるのだろうか。
残酷なシーンを見た天使の悪魔の感想は、どこまでも悪魔寄りだった。
隣のカナタは、派手なスプラッター演出を怖がるでも笑うでもなく、ぼんやり眺めている。
こういう時、恋人ならもっと密なスキンシップを取るのだろう。
プラスチック越しにしか唇に触れられない自分といて、カナタは退屈に思わないのだろうか。
だが、生まれ持った能力はどうにもできない。こんなこと考えるのは無意味だと、天使の悪魔は自身に言い聞かせる。
民間人が襲われ、助けを乞い、ヒーロー参上。
単調な展開にいい加減飽き飽きしたところで——。
「…帰らないで」
カナタが突然、縋るように天使の悪魔に抱きついた。