第22章 相合傘
彼が傘を開き、並んで歩き始める。
折り畳み傘だからちょっと小さい。
多少濡れたって平気だけど…。
せっかくだからもうちょっと近くに寄っていいのかな…。
彼の顔を見上げる。
「え?」
彼が視線に気付く。
「あの…もう少し近くに寄っていい?」
私は思い切って聞いてみた。
「い…いいよ…」
戸惑いながら彼が答える。
私、思い切り過ぎたかな…。
でもせっかくなので近くに寄る。
ときどき彼が傘を持つ手と私の肩がぶつかる。
そのたびにちょっとドキドキする。
もういっそのこと腕組んじゃった方が楽なんじゃないかと思うけど、そこまでは出来ない。
いつも彼は歩きながらいろいろな話をしてくれるのに、今日は無口だ。
私も何を話せばいいのかわからない。
傘に雨があたる音だけがよく聞こえた。
fin