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逢坂くんの彼女

第22章 相合傘


逢坂くんと一緒に登下校するようになったばかりのある日。

(雨降りそうだなぁ。逢坂くんまだかな?)

私は図書館の窓から空模様をうかがう。

もうそろそろ彼が部活を終えて私を迎えに来てくれる時間。

私は読みかけの本のページをめくる。



「ごめんね!少し遅くなってしまって…」

逢坂くんがすまなそうに、でもちょっと嬉しそうに私に声をかける。

「ううん、いいよ。おかげで最後まで読めたから」

私がそう言うと、彼はホッとした感じで微笑んだ。

「でも雨降りそうだね」

私は本をしまいながら彼の顔を見てみる。

「あぁ…もう降ってきちゃったよ?」

彼が遠くを見ながら答えた。



私たちは廊下を話しながら歩く。

玄関ホールに着く。

雨がしとしと降ってるのが見える。

「ホントだー。結構ちゃんと降ってるね」

私は外と彼の顔を順番に見る。

彼はにっこりと微笑む。

「大丈夫だよ。傘を持っているから」

そう言って、彼がカバンから得意気に折り畳み傘を取り出す。

「わたしも持ってるよ」

私もカバンから折り畳み傘を取り出そうとすると

「どうして?」

そう言って、いきなり彼にガシッと腕をつかまれる。

「え?ええっ?え…?」

私はいきなりのことにちょっとびっくりする。

「あっ……ごめん…」

彼がサッと手を離す。

「…ううん」

気まずくなってお互いうつむく。

……。

「いや、どうして…傘を持っているのかなと思って…」

彼が先に口を開く。

「天気予報で夕方から降るって言ってたし…」

ていうか逢坂くんも持ってるよ?
と私は答えながら思う。

「いやゆめちゃんそんな人じゃないでしょ…」

彼が独り言のようにつぶやく。

え?わたしどんな人なの?

「僕の傘に入れてあげてもいいんだよ?」

彼が私の顔を見ないで言う。

……。

もしかして相合傘ってヤツ?

「あ…あれっ?」

私はカバンを探るフリをする。

「傘入れたつもりなんだけど…入ってない。玄関に置いてきちゃったのかな?」

ちょっと上目遣いで彼の顔をじーっと見てみる。

彼の顔がちょっと赤くなる。

そして私の顔を見て言った。

「い…一緒に…傘に…入ろうか」

「…ありがとう」

私がお礼を言うと、彼は少し恥ずかしそうに頷いた。
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