第21章 お昼
ある日、逢坂くんが私に尋ねた。
「ねぇゆめちゃん。昼休みはいつもどうしているの?」
「え?普通に…友達とお弁当食べてー、しゃべってー、ジュース買いに行ったり、マンガ読んだり…かな」
私はいつもの昼休みの様子を思い浮かべながら答える。
「特に用事はないんだね。じゃあ僕と昼食を一緒に…」
私は彼の言葉をさえぎる。
「は?何言ってんの?全部大事な用事なんだけど」
「え…?」
彼が不思議そうな顔をする。
私は教えてあげる。
「昼休みに抜けたら午後の会話についていけなくなるもん」
「…そんなに大事な話をしているの?」
ためらいがちに彼が質問する。
私は答えてあげる。
「そうだよ、全部大事。大事じゃなくても大事なの!
わたしは部活もやってないし、クラスの女子のコミュニティから外れたらぼっちになっちゃうもん」
私の答えを聞いた彼がにっこりと微笑む。そして提案する。
「僕がいるよ!休み時間のたびに会いに行くよ。僕が移動教室のときは本でも読んでいるといいよ」
私はため息をつく。
「…逢坂くん全然わかってない。
逢坂くんはそれでいいかもしれないけど…わたしは女子高生なんだよ?
逢坂くんだって周りに女子高生がいっぱいいるんだから、ちょっとでも様子を見てたらわかりそうなものだけど…」
「僕は君にしか興味が…」
私は彼の言葉をさえぎって話を続ける。
「逢坂くんのそういう所どうかと思うなぁ。
せっかく周りにリアルな高校生がいっぱいいるんだよ?
もっと他人に興味を持ったらどう?
そんな風だからいつまで経ってもこじんまりした小説しか書けないんじゃないの?」
あっ!言い過ぎた…!
逢坂くんの顔を見てみる。
口を半開きで、ちょっと呆然とした表情に見える。
「あの…ごめん…。言い過ぎちゃった。
わたし本当に逢坂くんの小説がこじんまりしてると思ってるわけじゃなくて…
そういう風に言ったらダメージ与えられると思って…つい口が。
別に本当にこじんまりしてると思ってるわけじゃないよ」
私は言い訳する。
彼が口を開く。
「いや、いいんだ…。
そんなことより…今、何だかゾクッとしたんだ…。
この感覚…確かめたいから…もう少しだけ罵ってみて?」
彼がちょっと頬を赤らめて言った。
(うわぁキモチワルイ)