第17章 17才
夜、私は一人で公園にいた。
家の近くの公園じゃなくて学校の近くの公園。
あてもなく、なんとなく歩いてたらここまで来ちゃった。
家の近くにいたくなかったから。ただそれだけ。
疲れたからベンチに座る。
外の道路は人通りはあるし、街灯もあるけど、人のいない公園で一人。やっぱりちょっと心細い。
…
「…ゆめちゃん?」
誰かが私の名前を呼ぶ。聞き慣れたこの声は…
「…え?逢坂くん?」
自転車に乗った逢坂くんがこっちに来る。
「やっぱりゆめちゃんだ。
どうしたの?こんな時間に、こんな所で…」
逢坂くんが優しく私に尋ねる。
「別に…。逢坂くんは何してるの?」
私は尋ね返す。
「今日発売の雑誌を買うのを忘れててね。本屋に行こうとしてたんだ。でもよく考えたら発売日は明日だったよ」
そう言って彼はにっこり微笑む。
そしてベンチの横に自転車をとめる。
「隣に座ってもいい?」
彼が尋ねる。
「…いいよ」
私は答える。
「お腹空いてない?ご飯は食べた?」
彼が尋ねる。
「ご飯は…家で食べた…。はぁ…」
私は大きくため息をつく。
彼がちょっと笑う。
「いったいどうしたの?急に」
「あのね…」
私は話し始める。
「親とケンカしたの。それで家にいたくなくて…。でもなんか情けないよね。親の作ったご飯食べてさ…」
私はもう一度ため息をつく。
「ふふ…そっか。
でも女の子がこんな所で一人でいたら危ないよ。僕に電話してくれたらよかったのに」
彼が優しく言う。
「そうだよね…。なんか恥ずかしくて。高校生にもなって親とケンカしたとか。逢坂くんはそんなことないでしょ?」
「さぁ…。でも僕も一応17才だからね。いろいろあるよ?」
「えー。いろいろって何?」
「ふふ…いろいろだよ」
彼が笑ってごまかす。そして腕時計で時間を見る。
「9時までには家に着くように帰ろうか。送っていくよ」
「…帰りたくないな」
私はつぶやく。
彼が私の肩を抱いた。そして耳元でささやく。
「このまま二人で…何処か遠くへ逃げようか…」
私は顔を上げる。
彼はにっこり微笑む。
「冗談だよ。言ってみたかっただけ」
私は彼の胸に顔をうずめる。
彼が私の背中をポンポンと叩く。
どうして私たちは17才なんだろう。