第13章 特別な日
6月に入ったばかりの日。
いつもの学校の帰り道、私は逢坂くんに探りを入れることにした。
「ねぇ逢坂くん、最近欲しいものある?」
「え…特にないけど。強いて言えばハードディスクかな。データ管理に必要だからね」
「イマドキは小説もデジタルなんだね…。
うーん、でもそういうのじゃなくてさぁ、もう少しロマンティックというか、時計とか財布みたいな…そういう小物で何かないかな?」
彼はちょっと首を傾げて考える。
「ロマンティック?時計?小物?
あ…もしかして、ゆめちゃん。僕の誕生日に何かくれようとしているの?」
「あ…バレちゃった。それとなく探るって難しいなぁ」
私はガックリする。
「その気持ちだけで僕は充分だよ」
逢坂くんがにっこり微笑む。
「あ、でも…ゆめちゃんが欲しいな…なんて」
そう言って彼は頬を赤らめた。
私はにっこり笑って彼の手を繋ぐ。
「私はもうとっくに逢坂くんのものだよ」
「ふふ…じゃあ僕はもう何もいらないよ」
「うふふ…」
…
とは言っても…何かプレゼントしたいなぁ。
家に帰って机に座り考える。
何か特別なもの…。
私自身にリボンをかけて「わたしをあげる」とか?
月並みだなぁ。
もっと特別な…忘れられないような…。