第9章 シロツメクサ
ある放課後
私は図書館で逢坂くんに勉強を教えてもらっていた。
「…でね、これはこうだからこうなって」
パキ
「あ…また折れた。なんか今日はよく折れるなぁ」
逢坂くんがシャーペンの芯をカチカチする。
私が遊園地でプレゼントしたクマくんのシャーペン。私のと色違い。
彼はペンケースから別のシャーペンを出して続ける。
「…こうだから、こうなるんだよ」
「そっか。うん、わかった。いつもありがとう」
勉強を教えてもらい始めた頃は教えてもらってもわからないことが多かったけど、最近はだいぶわかるようになってきた。
「じゃあ、帰ろうか。ちょっと遅くなったね」
「うん」
いつものように私たちは図書館を出て家路についた。
…
次の朝
「ごめん!ゆめちゃん」
待ち合わせ場所に現れた私に逢坂くんがいきなり謝る。
「え?なに?」
驚いた私に彼が説明する。
「ゆめちゃんにもらったシャーペンを失くしてしまったんだ…」
「あぁ、あのクマくんのシャーペン?昨日図書館で使ってなかった?」
「うん…図書館で使ったのは覚えているんだけど、家に帰ってペンケースを見たら入ってなくて…。学校に着いたらすぐ図書館に行って探すつもりだけど。はぁ…」
彼がしょんぼりして続ける。
「初めてゆめちゃんにもらったプレゼントなのに…ごめんね」
しょんぼりする彼が可愛くてよしよししたくなっちゃう。朝だからしないけど。
代わりに私は提案してみた。
「見つからなかったら新しいの買おうよ。またお揃いで。キティちゃんにしようかな。マイメロちゃんがいいかな」
「キティちゃん…マイメロ…。僕がそれを使う…の?」
彼がちょっとイヤそうな顔をする。
「お揃いだったら何でも使うって言ってたよ」
「言いました…」