第7章 偶然
「ゆめちゃん」
放課後の図書館、時間潰しする本を探して書棚をあさっていた私の名前を呼ぶ懐かしい声。
「…!雨宮くん」
彼に気づいた私に雨宮くんはにっこりと微笑む。
「また会えたね、ゆめちゃん。元気だった?」
昔のままの懐かしい優しい話し方。
だけど…声はちょっと変わったのかな。大人っぽくなったような気がする。
「うん。元気だよ。雨宮くんは?(死んでない?)」
「元気だよ。学校は楽しい?ゆめちゃんの話を聞かせて欲しいな」
雨宮くんはニコニコと楽しそうに私の話を待つ。
「うん、楽しいよ。
あ、そうだ。前、言い忘れたけどわたし…彼氏できたんだ」
私がそう言うと雨宮くんの顔が一瞬曇る。
「そうなんだ…。なんだか友達を取られちゃったみたいで寂しいな…」
雨宮くんが寂しそうにうつむく。
「ううん。雨宮くんはずっと私の大事な友達だよ」
私がそう言うと、雨宮くんは顔を上げてにっこりと笑った。
「ありがとう、ゆめちゃん。
どんな人なの?ゆめちゃんの彼氏って」
「えっとね…文芸部の逢坂くんていう人なの。本が好きで、優しくて…。
あれ?なんか雨宮くんに似てるね」
私が笑うと雨宮くんも笑った。
「僕は何も変わらないのに…、ゆめちゃんは大人になったんだね…」
「そんなことないよ。背もこんなに大きくて、声だって男の子らしくて…。カッコイイよ」
「えへへ。照れちゃうな」
雨宮くんが嬉しそうに顔を赤らめる。
「僕…ゆめちゃんのおかげで大人になれたんだよ。ゆめちゃんの役に立ちたいな。僕に出来ることがあったら何でも言ってね」
「うん。雨宮くんも私になんでも言ってね(成仏とか手伝うよ?)」
「うん…。じゃあ今日はもう行かなきゃ。またね、ゆめちゃん」
「またね…」
雨宮くんは手を振って棚の向こう側に歩いて行った。
また会えるかな…。