第5章 お見舞い
「プリンを買ってきたんだけど食べられるかな?」
彼がコンビニの袋を私に見せる。
「わぁ、ありがとう。うーん、後で食べようかな」
「そっか。熱があるの?大丈夫?」
彼が私のおでこにそっと手をあてる。気持ちいい。
「もう7度台まで下がったから大丈夫だよ。でも逢坂くん、あまり近寄ったらうつっちゃうかも」
「うつってもいいよ。
いやむしろ、君の身体中を巡った風邪の菌が僕の身体に入り込み…僕の身体が熱に犯される(←誤用)
想像すると僕の身体はそれだけで熱く…」
そう言って彼は、寝ている私に顔を近付け唇を重ねようとする。
私は目を閉じる。
…
トントン
「入るよー」
ガチャ
姉の声と同時にドアが開く音がする。
逢坂くんが慌てて身体を離しドアの方に向き直す。
「ジュース持って来たよぉ。どうぞー」
姉がニヤニヤしながらグラスに入ったオレンジジュースを運んできた。
(おねぇ…。女友達が部屋に来たときはこんなことしないのに…)
自分の顔が微熱以上に赤くなるのを感じる。
「わっわざわざすみません。
これプリンなんですけど、冷蔵庫にしまっておいてもらえますか?
お姉さんもよかったらどうぞ。コンビニのものですが」
逢坂くんがプリンの入ったコンビニ袋を姉に手渡す。
「あら、ありがとう。セブンのスイーツ大好きよ。
ね〜?ゆめ〜?
それじゃあ、ごゆっくり〜」
引き続きニヤニヤしながらドアを閉め出て行く姉。
…
「びっくりした…。なんか喉が渇いた…」
そう言って逢坂くんはオレンジジュースを飲み干した。
fin