第5章 お見舞い
夏風邪で学校を休んだ夕方、ベッドでウトウトしていると廊下から姉の話し声が聞こえた。
(お母さんもう帰ってきたのかな…)
ぼんやりした頭で考える。
ドアをノックする音がする。
トントン
「ゆめ開けるよ」
ガチャ
「ゆめ、彼氏来たよ。
どうぞ、逢坂くん。あの子寝てるかもしれないけど入っちゃって」
「ありがとうございます」
姉と逢坂くんの話す声が聞こえる。
えっ?
姉がドアを閉めて出て行く。
逢坂くんが枕元に座る。
私は思わず布団で顔を隠す。
一日中寝ててどんな顔になってるんだろ私…。
「ごめん。起こしちゃったかな?」
逢坂くんが布団の中の私に声をかける。
「ううん、ずっと寝てたから…。そろそろ起きようかなと思ってたんだ」
私は布団の中からゴニョゴニョ答える。
「よかった。メッセの返信がないからちゃんと寝てるか確認…いや心配で来てしまったんだ。
お姉さんも相変わらず綺麗だね」
「ふん。ケバいだけでしょ」
姉をほめる彼に冗談半分、嫉妬半分で返答する。
彼が私の顔を隠した布団をペラっとめくる。
「ゆめちゃんも可愛いよ、いつも」
そう言ってにっこり微笑む。
取って付けたようなお世辞に私は笑っちゃう。