第33章 逢坂くんがサンタクロース(前編)
「おはよう、逢坂くん」
「おはよう、ゆめちゃん」
翌朝、私たちはいつもの公園で挨拶する。
彼が私の巻いているマフラーをじーっと見る。そして言う。
「そのマフラーとても似合っているけど…」
「けど?」
私は聞き返す。
「あっ、ううん。なんでもないよ」
しまった…って感じの顔を一瞬した彼が、笑顔になりごまかす。
ぷぷっ。
やっぱりあの手紙、逢坂くんが読んだんだ。
マフラー持ってるのに、どうして新しい物が欲しいのか不思議なんだよね。
教えてあげよう。
私はマフラーの裾をひっくり返して彼に見せる。
「このマフラーね、気に入ってるんだけど、ここにコーヒーの染みが付いちゃってるの。いろいろしてみたんだけど取れなくて。目立つ場所だから気になるんだよねー」
「なるほど…」
彼は、うんうん頷く。
「気に入ってるなら同じ物が欲しいの?」
彼が尋ねる。
おっ、突っ込んで聞いてきた。
私は答える。
「ううん。どうせなら今度はもう少し明るい色がいいかな。ていうかチェックなら何でもいいかな」
ていうか、逢坂くんがくれるなら何でも嬉しいよ。
私はガマン出来なくて、超ニコニコしちゃう。
「なるほど…チェック柄のマフラーが欲しいんだね」
彼が真面目な顔で頷く。
うふふ、本当にサンタさんみたい。
私だけのサンタさん。
「ん? 今朝は何かご機嫌だね」
ニヤニヤが止まらない私に、彼が問いかける。
「うん! 12月って楽しいね。早くクリスマスにならないかなぁ」
「ふふ、そうだね」
彼もニッコリ微笑み返してくれる。
To be continued …