第33章 逢坂くんがサンタクロース(前編)
「ゆめちゃん。今年はサンタさんに何をお願いしたの?」
登校中、逢坂くんが私に尋ねる。
彼の顔を見る。
顔に微笑をたたえてはいるけど…
いつもの真顔で冗談言うシリーズ?
ふむ。
「わたしのところねぇ、ここ数年サンタさん来ないの。わたし悪い子だからかなぁ」
私は軽く泣きマネする。
とりあえず冗談で返そう。
「そんなっ…。ゆめちゃんはいい子だよ。きっと何かの手違いだよ。
僕にいい考えがある。明日僕の家においで」
彼が私をおおげさに励ましてくれる。
オチは明日か。引っ張るなぁ。
…
翌日、放課後。彼の部屋。
「家にはサンタが来るんだ。だから僕は毎年12月になると手紙を書く。この特別なレターセットでね。
だからゆめちゃんに、これをあげる。欲しい物を書いていいよ」
……。
彼の顔を見る。
ニコニコしているけど、冗談を言っているというよりは微笑ましい顔をしている。
まだ引っ張ってる?
「特別なレターセット…なんだ」
私は封筒と便せんを透かしたりして眺める。
雪の結晶とかのイラストが付いててクリスマスっぽくはある。
「うん! 12月になると、突然どこからともなく現れるんだ」
「それは特別だね!」
想像以上の答えに、私は驚く。
「でも、これは逢坂くん用の物なんじゃないの?」
「ゆめちゃんに譲るよ。ゆめちゃんの喜ぶ顔が僕のクリスマスプレゼントなんて最高だからね」
彼がニッコリ微笑む。