第3章 逢坂くんのストーカー日誌
12月×日
下校時、校舎を出て行くゆめちゃんを影から見送り僕も帰ろうとすると、彼女が慌てて走って戻って来た。
僕は思わず隠れる。
外では雨が降り始めたようだ。
ゆめちゃんは困った顔でロビーをウロウロしている。
傘を持っていないのか?
天気予報でちゃんと雨の予報だったのに。
それに夕方から雨が降りそうな雲が広がっていたんだから、傘を持っていないなら図書室に寄らないでさっさと帰ればよかったのに。
あまり計画性のない性格のようだ。
そういう所も可愛いなと僕は思う。
というか…僕は傘を持っている。
これで一緒に帰ればいいんじゃないか?
「一緒に傘に入ろうか」
って。
いや、彼女は僕を認識していないだろう。
でも図書室に頻繁に出入りしているから顔ぐらいはわかるかも?
たとえ知らなくても同じ1学年なんだ。
彼女は困っている訳だし、声をかけてもいい場面なんじゃないか?
「ゆめ何してんのー?」
階段を降りてきた女子がゆめちゃんに声をかける。
「傘忘れちゃったのー」
「バカだねぇ。今日雨降るって行ってたのに」
女子がカバンから折りたたみ傘を出す。
「わっ、入れて入れてぇ」
ゆめちゃんがわざと甘えた声を出して言う。
「しょうがないなぁー」
そう言って彼女たちは仲良く腕を組んでキャーキャー言いながら相合い傘で帰っていった。
……
まあ、チャンスはこの先いくらでもあるだろう。
僕はゆめちゃんのことなら何でも知っている訳だし…。
「入れてぇ」か…。
記憶しておこう。
僕は一人で傘をさしていつもの帰り道をゆっくりと歩いた。
fin