第2章 1
「なんで侑士兄さんが悲しそうなん」
「そら悲しくもなるわ。(名前)やって泣きそうやで」
そう言って私の目頭を親指で撫でて涙を取る
「(名前)なんかしたいこととかあるか?」
「じゃあ全国大会優勝で活躍しとること見たいわ」
兄さんは目を大きくあけて固まった
「私な侑士兄さんがテニスしとるとこ見るんが1番好きなんよ」
「簡単に言いよって」と呆れたような顔をする
「え〜出来ないの?」
兄さんは一瞬言葉を詰まらせて、視線を窓の外に逸らした。
「ふっ兄さんに任せとき」
あっ侑士兄さんが笑うた顔久しぶりに見たかも、顔は中3に見えん癖にそういう時だけ年相応になるんや
「…だからそれ迄に居らんくならんとってや」
兄さんの泣きそうな顔初めて見るわ
「うん、何処にも行かんよ」
侑士兄さんと冗談を言い合ったり部活のことを聞いてたりするとドアのノック音と看護師の声聞こえた
「(名前)様、侑士様もう面会の時間は終了となります」
「じゃあ帰るわ」
私が名残惜しそうな顔をしたからか私の頭を撫でながら
「また来るからそないな顔せんといて」
と言って去っていった。少しずつ見えなくなっていった背中が完全に遮断された。ドアが閉まった瞬間、春の木漏れ日がまた私の顔に落ちる。さっき侑士兄さんが拭ったはずの頬が、今度は本当に濡れていた。
侑士兄さんが帰ってから、病室はやけに広く、そして静かに感じた。窓から射す春の光は相変わらず優しいはずなのに、どうしてか胸の奥にぽっかりと穴が開いたみたいだ。
やわらかな陽射しがやけに胸にあたって痛かった