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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎 冨岡義勇★R18

第114章 平和の代償


翌朝早く、義勇は出かけると言い残して屋敷を出た。

向かった先は、不死川の屋敷だった。

「よく来たなァ。入れ」

短く声をかけた不死川は、義勇を中に招き入れる。

座敷に腰を下ろすと、義勇は迷いのない視線で切り出した。

本題は、時透無一郎によく似た人物の目撃情報についてだった。

かつて鬼殺隊に所属していたある「隠」が、故郷の街で見かけたのだという。

「俺は探しに行こうと思っている」

義勇の静かな一言に、不死川は鋭い眼光を向け、眉間に皺を寄せて問い詰めた。

「…てめェ、今の生活がなくなってもいいのかよ。あいつが戻れば、ゆきは時透の元へ帰り、お前の手元から完全にいなくなるんだぞォ?」

ゆきのお腹には新しい命が宿り、義勇は彼女と子を守ると誓ったばかりだった。

もし無一郎が生きていれば、彼女の心も体も間違いなく彼の元へ帰る。

手繰り寄せかけた幸せの手綱を、自ら手放すことに他ならなかった…。

だが、義勇は取り乱すこともなく、不死川へ向けてにっこりと微笑んだ。

「いいんだ」

その笑みは、真っ直ぐだった…。

ただ純粋に、愛するゆきの幸福だけを願う澄み切った決意がみえた。

かつて命を賭して戦った仲間が生きていてほしいという願いと、ゆきに本当の笑顔を取り戻してほしいという想い。

それが義勇にとってのすべてだった。

これまで見たこともない義勇の穏やかな表情を目にして、不死川はぐっと奥歯を噛み締め、余計に胸を痛めた…。

「…チッ、勝手にしやがれェ。だがな、俺も行くぞ」

吐き捨てるような口調でありながら、不死川は義勇の事が気がかりだった。

一人で痛みを背負おうとする義勇を、ただ見送るわけにはいかない。

二人は静かに頷き合い、遠い空の下にあるかもしれない「奇跡」を確かめるため、歩みを進めるのだった。


その頃ー

幸は、食事の用意を終え居間でゆきが来るのを待っていた。

「ゆきさん、遅いな?」

なかなか、居間に現れないゆきの様子を見に、部屋へと向かった。

「ゆきさん。おはようございます。」

「……」

返事がない事を不審に思った幸は、慌てて襖を開いた。

「ゆきさん!失礼しますね!」

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