第113章 決心〜冨岡義勇【微R】
義勇は静かに部屋へ入り、横たわるゆきの傍らへ歩み寄った。
ゆきは力なく視線を向け、消え入りそうな声で呟く。
「…ごめんなさい…結局また、御迷惑をおかけしました…」
義勇は何も言わず隣に腰を下ろすと、横になっているゆきを覆いかぶさるようにして優しく抱きしめた。
愛おしそうにその髪を撫で、頬に触れる。
「すまない…俺のせいでお前に、苦しい思いをさせた」
「…いいえ…」
「俺はお前にとっくに振られているというのに…自分の身勝手な気持ちをずっと押し付けていたんだ。だからあの嵐の夜お前を、我が物顔で抱いたんだ…。それで…こんな事に…」
覆いかぶさる義勇の体の重みと手の温もりに、ゆきはそっと目を閉じた。流れる静寂の中、かすかに唇を開く。
「私は…きっと心の奥底では、選べていなかったんだと思います…。」
頬を撫でていた義勇の手がピタリと止まる。
「無一郎くんも…義勇さんも…本当はどちらも大切で、好きだったんだと思います。だから…私が悪いんです…」
「ゆき…」
「お腹に、どちらの子か分からないけれど新しい命が宿って…二人とも大切なんだと気づきました。……義勇さん、無一郎くんの二人を同時に愛すなんて、きっと許されないことなのに…」
苦痛と流血により愛する命を失った深い悲しみと罪悪感が、ゆきの言葉から溢れ出す。
「そんな私に、天罰がくだったんです。」
義勇はゆきをかばうようにさらに強くその体を抱きしめた。
「ならば……二人とも愛したらいいじゃないか?」
「何を、言うんですか?無理ですよ」
義勇は、体を起こしゆきを見つめる。
「俺は、構わない…お前が時透の事も、想っていても完全に、線を引かれお前から拒絶される方が苦しい…。」
「無理を言わないでください…。不可能です。」
義勇は、ゆきの唇をそっと指でなぞる…。
唇が、重なろうとした瞬間に幸の声が響いた。
「師範、中に入ってもよろしいでしょうか?私がゆきさんの診察をもう一度します。」
義勇は、ゆきから体を離すと、「入ってもいい」と幸に告げた。