第113章 決心〜冨岡義勇【微R】
義勇は静かに立ち上がり、幸に診察を任せて部屋を後にした。
廊下に出ると、壁に背を預けていた不死川がいた。
「悪ぃな、話聞いちまった……」
頭を掻きながらそう呟く不死川に、義勇は何も返さない。
二人は一言も交わさぬまま、重苦しい沈黙を纏って静かな廊下を歩いて行った。
一方、静まり返った室内では、幸が密かに抱いていた疑問をゆきに投げかけていた。
「ゆきさん……師範と交わった嵐の夜より前から、月のものは途絶えていましたか?」
ゆきは力を振り絞り、即座に頷いた。
「はい…途絶えていました。なぜ、そんなことを?」
その言葉に、幸は確信を深める。
お腹に宿っていた命は、時透無一郎との子であった可能性が極めて高いのだと。
真相を伝えるべきか葛藤しながら、幸は静かに口を開いた。
「ゆきさん……お腹のお子さんは、きっと…」
「もう……お腹にはいないのでしょう?」
言いかけた幸の言葉を遮り、ゆきは寂しげな声を響かせる。
「……はい」
幸が伏し目で深く頷くと、ゆきは小さく息を吐き、静かに瞼を閉じた。
「どちらの子であろうと、もう失われてしまったのなら……ただ寂しさが残るだけです。幸さん、ごめんなさい……身勝手なことばかり言って」
我が子を失った罪悪感に苛まれるゆきの頬を、一筋の涙が静かに伝っていった。
「私が、何も考えずに屋敷を出て無理したからこんな事になってしまったんです…。」
「ゆきさん…そんな事ないですよ。」
気落ちしたゆきを、幸は横にさせて落ち着かせた。
その日の夜だった。
義勇、不死川にも緊急招集が鎹鴉により伝えられた。
「緊急招集!緊急招集!柱ハ、時透無一郎ノ任務先ノ山ニ集結セヨ!鬼ノ巣ヲ発見!」
ゆきの事もあり不死川の屋敷には義勇も幸も滞在していた。
眠るゆきの傍らに義勇は、座っていた。
緊急招集の命を聞き義勇は、鴉の声で目を覚ましたゆきに深い口づけを落とした。
突然の事で息が出来ないゆき…
唇を、離すと同時に義勇は「行ってくる」と告げて立ち上がった。
そして義勇は、ゆきの方を一瞬見たあとすぐに部屋を飛び出して行ってしまった。
「柱を集めるなんて…何が起きるの?」