第1章 失恋、そして
その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れた。そして、そのこぼれる涙に、彼のことが本当に好きなんだということを再認識させられる。
「そっか・・・、そうなんだ。元カノのこと・・・」
菊が申し訳なさそうな顔をして私を見つめる。菊はとても優しい子なのだ。でも、自分がすごく可哀想な子のように感じて、優しい親友から目を逸らした。本当に自分でも性格が悪いと思う。
「あ〜・・・、くやしい・・・。くやしいなぁ。そっか・・・まだ好きなんだ・・・。」
じゃあ、私は失恋したということになるのか。まだ告白もしていないのに。今、親友にずっと隠していた彼への想いを打ち明けたところなのに。こんなの、あんまりじゃないか。
「・・・みずきはどうしたいの?」
涙が止まる気配のない私に菊がぽつりと問いかける。私はどうしたいのだろう。私にも分からない。だって始まる前にこの恋は終わろうとしているのだから。いや、こんなの恋にすらなれていないのかもしれない。
そんな私の戸惑いを察してか、菊が言葉を続ける。
「それでも好きで諦めたくないなら、気になってるって伝えてみてもいいと思う。真尋くんは鈍感だから言わないとわかんないよ。伝えたら意識し出すかもしれないし。」
「・・・でも、もし断られたら・・・私のせいで菊が気まずくなるかも・・・」
「ううん、それは大丈夫。心配しないで。」
力強くて優しい声に、私は顔を上げて菊と目を合わせる。菊は優しく微笑んで私を見ていた。そんな菊の表情に、私が必死に塞き止めていた不安がとめどなく溢れ出す。
「でもっ・・・、ふられたら・・・。私、ふられたら、きっと立ち直れない・・・!」
最後な気がした。私がこんなにも好きだと思える人と出会えるのは。ここまで好きが溢れだして止まらない人は、もうどこを探してもいない気がした。
「好きな人なんて高校以来なの。自分が心から好きだと思えた・・・そんな人、真尋くんで三人目・・・。二十三年生きてきて、三人目なのっ・・・。」
これから先、本当にもう出会えないかもしれない。真尋くんに振り向いてもらえなかったら、もう私に恋愛は無理かもしれない。そんな焦りと絶望感のようなものが湧いてくる。
それに、私は今まで好きになった人に振り向いてもらえたことがない。
「・・・気持ちを伝えてふられたくない。」
